終わりを告げそうな
涼しい日曜日、
僕は
バタフライ忍者と
街に出た。
こんなに、
過ごしやすい
日曜日だから
もちろんのことだけど、
いつもより多くにぎわう
人々の群れは
新鮮な笑顔に溢れている。
そんな街の風景に
バタフライ忍者は
とてもとても
落ち着かない様子だった。
「こ、こんなに人が、
ひとところに集まったら、
も、問題が発生するよ。」
そんな彼の胸毛から、
どれほどの
汗がながれていたっけか。
そんな彼に
僕は
おどけてみせた。
「ははは、
問題が発生するって?
例えば、どんな問題だい?」
僕も街行くみんなと同じで
笑顔に溢れていた。
「君にそれを話したとしても
理解はできないよ。
それは
目に映るものじゃあ
ないからね。」
彼のまなざしは
いたって
真剣だったんだ。
「ど、どういうことだい??」
僕は不安な気持ちを飲み込んだ。
ゴクリ。。
どれほどの不安を
僕は飲み込んだっけか。
彼は
まぁ、
信じてくれなくてもいいけど、
と前置きしてから、
話した。
「この世のすべては
エネルギーで
できているのさ。
細胞というね。
そして
僕ら自身も
エネルギーの
一個の
集合体であるんだ。
建物もそう。
木や水や風もみんな。
細胞体が重なり合って
一つの物質を形作る。
それで
ちょっと
話がそれるけど
アリの行列を遠くからみると
ただの曲線みたいだよね。
近くにいけば
アリの行列だとわかるけどね。
じゃあ、
近くにいけない者が
いたとして
その者達は
それを
何と認識するだろう?
それは、勿論、
曲線でしかないんだ。
僕の言ってること、わかるかい?」
「まったく、
わからないね。
その話も長いのかい?」
まずい!!
そのとき、まずい!!
と思った。
僕は
危険認知度の
高い人間だ。
過去のデータベースから
すぐさま履歴を取り出した。
そして対処、実行!!
「いや、なんとなくわかるよ。
さあさ、続けて」
バタフライ忍者は
そのとき
確かに
言ったんだ。
僕は
それを
聞き逃さなかった。
「チッ!!」
そして
彼は続けた。
「人の吐く息は
二酸化炭素が大半だ。
そして、
この人だかりは
遠くからみれば、
ただの二酸化炭素の
集合体さ。
ということは、
健康によろしくないって
ことになるね。」
「え?
それは誰の健康にだい??」
「それはもちろん君ではなく、
その他まわりの人達のでもなく、
この僕の健康にだよ。」
「え??
なぜ、
君の健康にだけ、
よろしくないんだい?」
「何を言っているんだい。
君を含めて他の人達は
自発的にここに来てる。
しかし、僕は違う。
君に連れられて、
ここに来ているんだからね。」
僕は、
バタフライ忍者の
自分勝手な言い分に
困惑したんだ。
しかも、
そんなこと言われたんじゃ
もう帰るしかない、
と思った。
そんな気持ちで
街を歩かれたって、
僕もおもしろくも
なんともない。
「わかったよ。
バタフライ忍者、
すまなかったね。
無理に
こんな
二酸化炭素の固まりみたいな
場所に連れてきてしまって。
もう帰ろうね。」
僕は街を離れようと思う。
こんな腐れきった街には
別れを告げようと思う。
強欲につつまれた
この街は
きっとこんな小さな僕を
あざ笑っているだろうな。
僕は街を出てゆくんだ。
「逃げるのかい?」
「え??」
バタフライ忍者は腕を組んで
ビルの向こうを見ていた。
「君が行こうと決めたんだろう?
どんなに危険なところであろうが、
君がそこにゆくのであれば、
僕も一緒に行くに決まっている。
わかりきったことだ。
僕を誰だと思っているんだい?」
ネズミ色のビルの谷間を
風が吹き抜けた。
ビューッ!! ビューッ!!
ビューッ!! ビューッ!!
「バ、バタフライ忍者、
君って奴は、、、」
僕の目には
この街には似つかわしくない程の
きれいな雫があふれていた。
ああ、バタフライ忍者、
僕には見えるよ。
間違いなく見えるよ。
君との、
君との、、
とてつもなく
強い絆が。
彼は、
その後、
僕をこ一時間待たせて、
タワレコの
スラッシュメタルコーナーで
激しく
頭を縦に振りながら、
視聴していたんだ。


